特殊な用途向けに独自の録音方式、又は特殊なテープも開発された。
エンドレス・カセット・・・BGMや繰り返しの放送用に、同じ音声を繰り返す方式。摩擦を軽減するための特殊なバックコートを施したテープを使用している。テープの両端を同じ面同士で繋ぎ合わせており、一度再生すると終端からそのまま先端にループを繰り返す。歴史は意外に古く、1972年頃にはすでにTDKとフィリップスから発売されていた。他のオーディオテープでは4トラック(フィデリパック)、8トラック(リアジェット)、プレーテープ、ハイパックがこのタイプ。ただ、その特異な構造のためにスペースを取るので長時間タイプは存在しない(10秒〜6分程度;TDK/EC等。但し同社海外市場向けは12分の製品が近年まで存在していた)。また、巻き戻しも不可能なため片面走行のみ。スーパーマーケットの特売品売り場で、特価内容を知らせるために小型のカセットプレーヤーとともに用いる例がある。
LL(ランゲージ・ラボラトリー)・・・英会話の学習に用いられた方式で、ステレオの片チャンネルに手本となる音声が録音されており、もう片方の空きチャンネルに自分の声を後追い録音する。テープは通常の物だがレコーダーが特殊なタイプとなる(学習方式の名称であり、テープの名称ではない)。
4チャンネル・・・カセット式MTRに用いられるチャンネル利用法。両面2チャンネルステレオのトラック規格を片面4チャンネルへ転用したもの。磁気ヘッドはオートリバース用の4チャンネルタイプが流用されている。
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チャンネル、最大8チャンネル(TOA工業)も存在する。
倍速録音・・・敢えて速度を2倍速録音・再生し、音質の向上を目指したメーカーもあった(1970年代中期頃、マランツがSUPERSCOPEブランドで発売したラジカセの一部、TEAC社のオーディオ用カセットデッキC-○X、など)。
低速録音・・・上とは逆に、会議用等に走行速度を1/2,1/3にして録音時間の延長を図ったもの。各社のポータブルレコーダーおよび一部の業務用大型デッキに設定されていることが多い。資料としての長期保存性や、文字媒体転記作業でのリピート再生を目的とした強度確保の見地から、メディアには一般にC-90以下のタイプが用いられる。音質は当然落ちるものの、音声に限定すれば一応は実用レベルが確保されており、或る意味、カセット本来の用途への先祖返りとも言える。
テープには使用する素材の磁気特性により複数の種類があり、主なものとしてノーマル (Type I/NORMAL)、クローム/ハイポジション (Type II/CrO2)、メタル (Type IV/METAL) の3種類がある。ダイナミックレンジの広さはメタル>ハイポジション用コバルト被着テープ>ノーマルの順であるが、中低域の実用最大出力レベル(MOL)はメタル>高級ノーマルテープ≒>ハイポジション用コバルト被着テープ、ノイズ特性はハイポジション用コバルト被着テープ>メタル>ノーマルの順で優れている。録音レベルを手動で設定できるデッキでメタルテープを使用する場合、録音レベルを通常より+3dBほど高く設定することが推奨されていたのは、この特性を活かすためである。この他に、まだテープの性能も低かった1970年代中期にクロームと通常のγ三酸化鉄を二層に塗布して両者の長所を生かそうとしたフェリクローム (Type III/Fe-Cr) が開発された(ソニーの「DUAD(デュアド)」など)が、製造過程に由来するコスト高、取り扱いの煩雑さ、対応機器の少なさ(但しノーマル用機器でも使用自体は可能であったが)、更にメタル登場以降は性能面での優位性に基づく存在意義が薄れ、1980年代後半頃よりほぼ完全に廃れてしまい、一時は幻の規格とさえ言われた(現在はメタルも事実上生産されていない)。
これらは全てIEC(国際電気標準会議)で正式に策定されている。録音時の磁気特性(主に録音レベル)を決定するバイアス量と、録音・再生時の周波数特性に関わる補正値であるイコライザー (EQ) の時定数がポジションで異なり、本家本元のType Iのバイアス量を100%とすると、一般的にType II=160%、Type III=110%、Type IV=250%(この値は標準的なもので、デッキの機種、メーカー、時期、製品により変動がある)。また
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は、Type Iのみ120μs(マイクロ秒)、他は全て70μs。Type Iと比較すると他の70μsEQのタイプはノイズレベルが低いが、これは特に高域の補正量が大きいことに起因している(ごく一部の高級デッキでは、高性能テープの為に補正値を50%程度に調整可能な機能を持つものもあった。当然、IECの規格外であるため、基本的に自己録再が前提となる機能である)。 尚、イコライザーは録音・再生両方で合わせねばならないが、バイアスは録音時のみで良い。メタルテープが録音できないハイポジ対応のみのデッキでもメタルテープが再生できるのはこのため。
主な磁性体の材料としては、まずType I には当初から存在し現在でも廉価タイプに用いられるγ酸化鉄(γ-ヘマタイト、マグヘマイト;γFe2O3)、主に高級タイプに用いられた、Type III に倣った発想で、特性の異なるγ酸化鉄を二層塗布したもの(富士写真フイルム/Fx-Duo,日本コロムビア=DENON/初期DX3,DX4)、例は少ないが四酸化鉄(マグネタイト;Fe3O4)のもの (TDK/ED)、そして1980年代に入って開発された、γ酸化鉄の生成時の内部空孔(ポア)をほぼ無くして磁気効率を改良した無空孔(ノンポア/ポアレス)酸化鉄(TDK/初期AR,日立マクセル=maxell/初期UDI)及びそれのコバルト被着タイプ(前掲機種の後期型)がある。
後にType IIの主流になったものの、最初はType Iの高性能タイプ用に用いられたものに、コバルトドープ酸化鉄 (Scotch/HighEnergy) やコバルト被着酸化鉄 (maxell/UD-XL) がある。特にコバルト被着酸化鉄はその調整の容易さと高域特性改善の面からTypeIでも並行して用いられ、1970年代後期から高級タイプ (TDK/AD-X,maxell/XLI-S) の、1980年代中期以降は普及タイプ(富士写真フイルム=AXIA/PS-I,太陽誘電=That's/RX)にも多用された。
Type II用としては、最初期こそ代名詞ともなった二酸化クローム (CrO2)(デュポンが発明) が主流だったが、日本国内でめっき工場の
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などの公害問題(六価クロム廃液)の余波で次第にフェードアウトし、パテントのライセンス問題もあったので、一部で用いられたコバルトドープ酸化鉄 (Scotch/Master70,DENON/初期DX7) 等を経て、現在では殆どがコバルト被着酸化鉄磁性体(CoFe2O4;酸化鉄の表層にコバルトフェライトが結晶成長したもの)となっている (TDK/SA,maxell/XL II)。これはコバルトフェライトの被着量をコントロールし易い、即ち磁気特性の調整が容易な点が大きく、家庭用ビデオカセットや
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等、幅広く使用された。'80年代終期、この酸化鉄の代わりに前述のマグネタイトを核に用いたものもあり、日立マクセル、日本コロムビア等が採用した(maxell/最終XL II-S,後期UD II)。また、マグネタイトに被着したテープはビデオテープの方が先行していた。3M、マクセル、ビクター、コニカ、パナソニックのほとんどのメーカーが採用していた。マクセルは"ブラック・マグネタイト"等の名称で用いられていた。 VHSテープの場合はテープの磁気特性重視ではなく、おもにコストダウンのために採用されていた。 VHSテープではエンドサーチに赤外線センサーを用いており、透明なリーダーテープがセンサーを通過したときストップをする機構であった。ところが高性能化、すなわち微粒子化に伴い、赤外領域では光透過率が規格を満たさないようになったため核晶が黒色のマグネタイトの磁性粉を採用するに至った。核晶がγ-ヘマタイトより磁気特性が良いのでテープの磁性層も薄くできるのでコストダウンが可能となった。ちなみに初期のVHSテープはT-120換算で磁性粉の使用量は約40g、核晶がマグネタイトの磁性粉を使用して設計した場合、約20gに可能になった。また、磁性層のカーボンを低減して磁性粉の密度を上げることも可能になった影響も大きい。
Type IVとしてはいわゆるメタル(主成分はα-Feとコバルトなどの合金)であるが、これも酸化に弱いという欠点を克服すべく、各社工夫していた。表面にマグネタイトを形成する方法が一般的だがまったく充分ではない。還元時の焼結防止も兼ねてシリカ、酸化アルミニウムなどを析出、被覆し酸化防止をしている。 このメタル磁性体も、1980年代初期よりイコライザーが同じTypeIIへの転用が図られ、極めて高出力な特性を買われて主に高級タイプ (TDK/HX,DENON/HGM) に用いられたが、中には低価格タイプ (That's/EM) も存在する。このメタルパウダーの成分はNiを合金としており、ハイポジションの保磁力に近づけるように設計をしていた。これは言い方を変えればメタル磁性粉をパーマロイ化して保磁力を下げたといってよい。俗にLow Hcメタルとも呼ばれた。